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2009年6月

答弁書を書く(その1)

K:「小百合さん、答弁書の進捗状況は?
 そろそろ提出期限じゃないかな」

S:「はい、請求に対する答弁と認否だけでいいと
うかがいましたので、ごく簡潔に作成しました」

K:「この前やった『本案前の答弁』ができないか
念のため、訴訟要件を検討しておいてくれ

まあ、行政処分の取消訴訟じゃないから
『本案前の答弁』はできないと思うけどな」

S:「かしこまりました
ところで、以前、被告適格や裁判管轄が『訴訟要件』って
教えていただきましたが、他にもありますか」

K:「わーぉ、また急に初歩的なご質問を・・・
ついでに、『答弁』と『認否』も一緒に確認すれば
答弁書は完璧だろうな」

S:「初歩的なって、おっしゃいますけど
『訴訟要件』なんて、普通でてこないですもの

でも、『答弁』と『認否』はもう確認しましたよ」

K:「ほほーぅ、では、とりあえず、『答弁』は?」

S:「原告からの『訴状』に対する回答みたいなものですね
本案前の答弁』と『本案に対する答弁』があります」

K:「そうだね。『本案前の答弁』はこの前のN法人事件で
国側からされたので、理解したはずだから
 『本案に対する答弁』のほうは?」

S:「『本案に対する答弁』には『請求の趣旨に対する答弁』と
請求の原因に対する答弁』があって、
後者が『認否』になります」

K:「いいねー。それで、『請求の趣旨に対する答弁』は?

S:「簡単に言えば、原告の請求を認めるのか認めないのかです
原告の請求は訴状の『請求の趣旨』に書かれています

その請求をそのまま認める場合は、『請求の認諾』という
「原告の請求を認める」という答弁をします

 反対に、請求を認めない場合には、『請求棄却の申立て
被告が求める判決の主文に相当することを書きます

具体的には、『原告の請求を棄却するとの判決を求める』と
記載することになります」

K:「訴状のときもやったけど、訴訟費用も忘れないでくれよ
訴訟費用は、原告の負担とする』と書くだけだから」

S:「あー、もう忘れてた!」

K:「困るなぁ、では次に『請求の原因に対する答弁』
略して『認否』は?」

S:「ちょっと長くなるからコーヒータイムを」

K;「こら!逃げるな!答弁書の提出期限がきちゃうぞ」

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棄却と却下

K:「小百合さん、『棄却』と『却下』の違いは理解したかい?」

S:「はい。判決の種類には2種類あって
1つは、判決が『却下』されるケース。
訴訟判決』といって、訴訟要件をみたしていない場合に、
中身の審理に入る前の段階で訴えを不適当と
判断する
ものです。

もう一方は、判決が『棄却』または『認容』されるケース。
本案判決』といって、請求の中身の審理をして、

判断をするものです。『一部認容』の場合もあります。

これ以外に、『事情判決』っていうのもあるのですが、
レアケースなので省略します

要は、門前払いされるか、請求の内容に入って
審理してもらえる
か、ってところかしら」

K:「まあ、そんなところかな」


S
:「そうすると、『棄却』と『却下』って、
 原告側の主張が認められないという点では同じですが、
 内容はずいぶん違いますね」

K:「そうだな、却下は門前払いだから、気をつけないと」

S:「でも、相談にいらっしゃる納税者や税理士の中には
使い分けてない方もいらっしゃいますね」

K:「そうだね。ちゃんと使い分けていると
法的なセンスのある方として、こちらの対応も
自然と慎重になるよな」

B:「コホン。木下先生、気持ちはわからないでもないですが
お客様には、常に誠実にお願いしますよ」

K:「わっ、所長、もちろん、誠実な対応に変わりないですが
言葉を選ぶ際に、慎重になるという程度ですよ」

S:「なんか、言い訳がましくない?」

B:「それより何より、『本案前の答弁』されて
却下されないことが重要ですよ
N法人の件は大丈夫ですか?」

S:「そうでしたね、被告は『却下』を求めてきましたもの」

K:「それは、更正の請求に対する通知処分と
更正処分と同時にされたからで、こちらとしては
どちらかの一方の訴えについて『本案判決』がされれば、
他方は『却下』でいいのさ」

S:「どうして、わかっていて、そんなメンドくさいことするの」

K:「最高裁による最終判断が示されていなくて、
解釈がわかれているからだよ」

B:「私も以前、そのことについて、所内で検討したことを
思い出しましたよ

今回のように、2つの処分について
適法に不服申立てを前置して、訴えた場合は
どちらか1つの請求が却下されてもいいですが、

どちらかが不適法な訴えになってしまったときは、
裁判所もどちらかで救えるものなら、
救おうと考えるのだろうね

行訴法の改正の影響もあるでしょうから、
納税者からの訴えの適法性は極力認める方向に
あるといいなと個人的には考えています」

S:「だったら、国側も、わかっていて『本案前の答弁』なんか
しなければいいのに・・・」

B:「そうはいっても、手続も法律ですし、
しかも手続に則っていない場合は門前払いになるのですから、
解釈の余地がないほうがいいのは当然です。

国側としてはいろいろな解釈が存在しているからといって
事案に応じて処分や主張を使い分けるわけには
いきませんからね。

統一見解があるほうが業務上好都合なのでしょう」

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取消訴訟の答弁書が届く(その2)

(前回のお話のつづきです。租税訴訟で
本案前の答弁』はよくあるのでしょうか?)

K:「租税訴訟の手続は、国税通則法や行政事件訴訟法で
民訴より厳しい特則が定められているから、

租税訴訟に慣れていない弁護士や本人訴訟の場合は
訴訟要件をみたしていないケースもあり得るさ」

S:「原告側は、訴えの利益ありと考えて提訴をしたのに、
被告から『本案前の答弁』がされた答弁書が
提出されるとドキッとしてしちゃうわね

 税務訴訟では、どんな場合に『本案前の答弁』が
されることが多いんですか?」

K:「そうだな・・・租税訴訟の判決をみると、
通常は、提訴期限を徒過している場合とか
そもそも処分の取消を争うことに利益がない場合
請求できない金額まで請求した場合などが多いかな?」

S:「期限徒過って、行訴法改正で6月に延長されましたし
あんまり現実味がないけど」

K:「判決を検索してみると、請求が全部却下されているのは
めずらしいけど、一部却下は意外とあるよ。

たとえば、課税処分を受けた後に、
再更正処分があった場合なんかクライアントが
弁護士に知らせてくれないと、

訴訟中に訴えの利益がなくなっているのに、
争っていることになってしまうケースもあるのさ」

S:「どう対処したらいいでしょう?」

K:「うーん。そういう可能性がある場合には
クライアントと密に連絡をとって、
慎重に対応するしかないよな」

S:「だけど、被告側も原告の所轄税務署や国税局から
処分したことは把握してるんじゃないですか?」

K:「そうだけど、被告はイジワルでぎりぎりにならないと
『訴えの変更』の必要性を教えてくれなかったりするのさ

まあ、教えてくれるだけ親切ということかもしれないけど」

S:「まぁ、そんなイジワルするの?」

K:「いや。ちょっと言い過ぎたか。被告も課税部門と訴訟部門は
担当者が異なるし、税務署から国税局への連絡にも
それなりに時間がかかるのだろうけどね」

S:「ところで、『却下』ってそんなに大変なことなの?」

K:「うわっ! まだ、そのレベルだったか・・・
じゃあ、『棄却』と『却下』の違いについて宿題だ」

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取消訴訟の答弁書が届く(その1)

K:「小百合さん、被告から答弁書が届いたよ」

S:「ちょうど、答弁書を起案してるから、参考になるわ」

K:「オレも今から読むのだけど、
本案前の答弁』なんかされてないよな?」

S:「ありますよ。『本案前の答弁』って」

K:「ええっ! ドキッとするねぇ
そんな答弁されないはずなんだけどなぁ」

      ・・・(二人で答弁書を読んでいます)・・・

S:「通知処分の取消と更正処分の取消の両方を求めることは
できないってことみたいですね」

K:「ああ、そうか。N法人の事件は、通知処分と更正処分の
両方があったからな。まあ、しょうがないな。

こちらとしてはどちらかの請求を認めてもらえばよいから、
とりあえず、そのまま両方の取消を求めておこう」

S:「え?それでいいんですか?」

K:「この部分の判断は、確立した判例がないから
裁判所が事案に応じて適切な判断してくれるはずだ」

S:「ところで、『本案前の答弁』ってなんですか」

K:「ありゃ、今頃そんなこと聞かれても、困るなあ

被告は、請求の原因に手続的なミスを発見しては
原告の訴えを却下することを求める』という
答弁をするのさ

『本案前の答弁』は『本案前の申立て』とか
本案前の抗弁』ともいうが、答弁書には『本案前の答弁』って
されることが多いかな?

そして、この『本案前の答弁』がされると
内容の審理に入ることなく、請求が却下されてしまうんだ」

S:「え? でも、訴状審査を通過して、被告のところまで
送達されているってことは、訴訟要件を満たしたって
ことじゃないのかしら」

K:「うん。本来は、原告の請求の趣旨が訴訟要件を
みたしているかどうかは、裁判所が職権で調査する事項だ。

だけど、当事者が主張しないとわからない場合もあるから
そういう場合は、被告側から『本案前の答弁』をして、
訴えの却下を求めるのさ」

S:「なるほど。租税訴訟ではよくあるのですか?」

(次回に続く)

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口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状

B:「小百合くん、先日のP先生が裁判所から送達された
相手方の『訴状』と『口頭弁論期日呼出状』を
送ってきましたよ。

答弁書催告状』も一緒ですから、答弁書の起案を
お願いします。

木下先生には伝えてありますから」

S:「『口頭弁論期日呼出状』ですか?
なんか、犯罪者みたいですね
裁判所が勝手に期日を決めるのですね」

B:「そうです。でも、被告側は、この呼出状に
一緒に記載されている『答弁書催告状』に従って
指定されたて期限までに答弁書を提出すれば、
1回期日は出廷しなくてもいいですよ」

S:「え?それで問題はないのですか?」

B:「そうですね。第1回期日は、民訴法で
訴状又は答弁書の陳述の擬制が
特別に規定されていますから大丈夫ですよ」

S:「では、原告も出廷しないのですか?」

B:「いや、双方とも出廷しないと、
口頭弁論ができませんから、民訴法上も
『原告又は被告』となっています。
通常は原告が、自分の訴えが認められるために
出廷していますね」

S:「でも、税務訴訟の場合はいつも国側の代理人が
出廷していたと思いますが・・・?」

B:「そうですね。国側は出廷するという内規が
あるのかもしれませんね」

S:「だから、訴状を提出した後に書記官さんから
期日の日程調整が入るのですね」

B:「どうしても第1回に出廷したい場合には、
当事者の合意があれば、期日も変更できますよ」

S:「あ、いえ、どうしてもってことはないです」

      ◎     ◎     ◎

原告から訴状が提出されると、その先では
どんな裁判手続が進められるのでしょうか。

まず、訴状が受理されると、裁判所では事件として
立件し(平成●年(△)第○○号××事件などと事件名が
付けられます。)、担当の裁判部に振り分けます。

ここまで、訴状提出の日に受付係がやってくれます。

その後、事件を割り当てられた裁判部は、
訴状の審査をして、補正などの問題がなければ、
被告に訴状副本(証拠があれば証拠も)と

口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状』を送達します。

口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状』には
裁判所に出頭する期日(第1回口頭弁論期日)、
具体的には、日時・場所(○○裁判所△号法廷)と

答弁書の提出期限が記載されています。

また、被告が代理人として弁護士に依頼しない場合も
考慮してか、答弁書の記載要領も添付してくれます。

期日は、民訴規則では「特別の事由がある場合を除き
1
月以内に期日を指定」となっています(60)。

訴状に補正が必要な場合などは、補正を待ってからと
なりますので、2月後位に指定されることもあります。



被告の場合、わずか1ヶ月で、代理人弁護士を探したり、

答弁書を提出したりしないといけないので、忙しいですね!

なお、原告には『口頭弁論期日呼出状』のみが
送達されます。

1回期日の出廷については、また後日お話します。

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