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2009年3月

二重起訴の禁止(その2)

B:「小百合くん、東京とさいたまの両方に提訴できない
   
法律の根拠はわかりましたか」

S:「はい。民訴法142に『裁判所に係属する事件については
当事者は、更に訴えを提起することができない
』と
規定されていました。

二重起訴というほか、重複提訴ともいうようですね。

B:「どういう事件が対象になるのかわかりますか」


S:「民事訴訟法上は、どのような訴訟が対象となるのか
議論のあるところのようですが、簡単にいうと
当事者が同じかどうか(当事者の同一)と、
審判対象(訴訟物)または争点(攻撃防御方法)が同じか
審判対象の同一・近似)という点で、判断されます」

B:「では、N法人事件について、当てはめるとどうなりますか」

S:「N法人の課税処分取消訴訟の当事者は、N法人と国です。
それから、訴訟物は、課税処分の違法性一般です。
したがって、N法人は1つの課税処分について、
東京地裁とさいたま地裁に重複して提訴できません」

B:「そうですね。それに、東京地裁に二度提訴もできませんね。
税務訴訟は、不服申立前置が採用されていますから

提訴までの期間制限もあり、二重起訴が問題となるケースは

ないでしょうね」

S:「そんなことないんです。意外とあるものですね。
税務訴訟で二重起訴とされた裁判例も検索してみました」

B:「おや、どんなケースがあるのですか」

S:「高裁係属中の更正処分の無効確認を求める訴えと
同じ更正処分の無効確認をも求める訴えを
地裁に起こしたケース(※1)や

還付金の滞納国税充当処分に係る審査請求の裁決を
求める訴えと、裁決不作為の違法確認の訴えを提起した後、
裁決がされたため、後者の訴えを、『
裁決が違法である』
という訴えに変更したケース(※2)がありました」

B:「ずいぶんと無茶な提訴をしたものですね。本人訴訟ですか」

S:「そうです。代理人名が判決文にないので、本人訴訟のようです」

B:「やはりね。弁護士がこんな、明らかに二重起訴になる
ケースで提訴することはないでしょうからね。

ところで、小百合くん、今度は税理士のP先生からの相談です。

どうやら、顧問先から損害賠償請求をされたようですよ。

急ですが、今週の木曜日の予定はどうですか?」

S:「木曜日、空いております」

B:「では、木下先生と一緒に面談をお願いします。
概要はメールを転送しますから、確認しておいてください」

S:「はい、かしこまりました」

         ◎          ◎          ◎

【本日の参考文献】
高橋宏志『重点講義 民事訴訟法 上』有斐閣(2005)108頁以下

【本日の裁判例】
※1 名高判平成7年3月30日(原審:名地判平成6年10月28日)
※2 東高判平成11年1月28日(原審:東地判平成10年5月12日) 

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二重起訴の禁止(その1)

B:「小百合くん、N法人の提訴、無事終わったみたいですね」

S:「はい、今日、提出しました」

B:「さて、サンタ事務所にきて、もう半年近くになりますが
どうですか、税理士の補佐人業は?」

S:「おかげさまで、勉強することが多く毎日がとても新鮮です。
先日、久しぶりに大学の友人にあったら
『小百合が勉強? ありえない!!』ですって
失礼しちゃうわ! でも、ホント楽しいですよ」

B:「では、質問です」

S:「え? 今日はサンタ所長が質問ですか?
 答えられるはずありません」

B:「いや、いいんですよ。これも勉強ですから
誰かに聞いたり、自分で調べたりしてください。

今日提訴したN法人、東京地裁に提訴しましたね。
どうして、さいたま地裁と両方に提訴しなかったのですか」

S:「どうしてって、そんなことできないからですよね?」

B:「なぜできないのか、法律に基づいて説明してください。
訴訟では、法律に基づいて主張しなければいけませんから、
大切なことです

たとえば、『人を殺してはいけない』

これは、当たり前ですね。法律に書いてなくても
絶対にしてはいけないことです。理由なんかいらない

つまり、『いけないことは、いけない』んです
子供でもわかってます

でも、訴訟になると違います

殺人事件は、刑法に基づいて判断をしますから
AさんがBさんを殺したという事実が、
刑法の何条に該当して、どのような刑を科すのが相当か
判断されるわけです

法的にモノを考えるには、法律の条文の意味、内容、
あるいはその趣旨をよく理解して、
要件を明らかにし、
事実をあてはめる必要があります

今までそういう訓練をしていない人は
急にはできないかもしれません。

訓練すれば、誰でもできますから、質問したのです

では、『両方に提訴できない』理由を楽しみにしてますよ」

S:「サンタ所長、ちょっとヒントください!
複数の裁判所に提訴できないのは当然って思ってましたが、
どこかで認めてもらえばいいから、いろんな裁判所に
提訴すればいいって考える人も、いるかもしれないわね」

B:「そうですね。そんなことになったら、訴訟の数が増えて
裁判官も大変ですね。これは、行訴法に限られることかな?」

S:「ということは・・・民訴法に何か規定があるはず
っていうことですね? 早速調べてみます!」

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訴状の提出(委任状と補佐人選任届)

K:「訴状は、金曜日には提出しようと思うから
あと、委任状と補佐人届を揃えておいてくれ」

S:「委任状と補佐人届って???」

K:「ん?これも初めてか?
委任状原告となるN法人からサンタ所長と僕に訴訟代理を
委任する書類で、定型の書式に署名押印してもらうんだ。
先日返送されてきて、まゆ嬢が保管してくれてる」

S:「補佐人届は?」

K:「サンタ所長が補佐人である小百合さんを選任する書類
これもまゆ嬢に作成しておいてもらったよ」

S:「補佐人選任届は日税連録資料集
『その他税理士に期待されること』の中にもでていました
ところで、補佐人はいつもサンタ所長が選任するのですか?」

B:「小百合くん、私が選任するのでは、不服なのかい?」

S:「あら、所長いつのまに?
実は、私の知り合いの税理士から、ご自身のクライアントの
訴訟で
弁護士が選任するのでなくて
原告となるお客さんに選任してもらったとうかがったんです」

B:「もちろん、私でなくて、木下先生や原告が選任することもできます
ただ、前にもいったかもしれませんが
補佐人
税理士は代理人である弁護士と一緒でないと
出廷できませんから、原告が補佐人を選任する場合でも
代理人の弁護士にも委任が必要ですよ」

K:「そういえば、ウチでも、税理士に紹介いただいた事件で
その先生にも補佐人になっていただいたのがあったな」

S:「そうしたら、補佐人に慣れていない税理士も
 税務訴訟に不慣れな弁護士にお願いするより
 原告に選任してもらって、税務訴訟に強い弁護士と組んで、
 
補佐人税理士の経験を積むことで、
 
ゆくゆくは税理士が経験のない弁護士をリードして
 税務訴訟を担うことができるようになるかもしれませんね」

K:「そうだね。

 ところで、せっかくだから、訴状の提出も行ってみたらどうだい?
受付や執務室は、また法廷とは違うから経験になるよ」

S:「是非!まゆ嬢にお願いしておきます」

     ◎        ◎        ◎

まゆ:「金曜日ですね。わかりました
  委任状と補佐人選任届はお預かりしていますので、
  貼用印紙と郵券の入金確認と準備をしておきますね
  訴状は添付で私のパソコンに送ってください」


S:「その委任状と補佐人選任届って、実物を見たことないの
 どんなものか、ちょっと見せてください」


まゆ:「はい、これです」


S:「ありがとう。

 で、今回、木下先生がチャレンジして、併合の訴えにしているので
 もしかしたら、印紙額が違うって言われちゃうかもしれないの」


まゆ:「大丈夫ですよ。その場合は、訴状の提出はさせていただき
 印紙については、係属部の書記官が連絡をくださるの」


S:「そう、よかった!
 ところで、訴状の提出って、どこにもって行くの?」


まゆ:「地裁の民事受付に提出します。東京ですよね?」


S:「そう。それで、金曜日は私もご一緒していいかしら?」


まゆ:「もちろんです」


 

 

S:「まゆ嬢、木下先生から今週の金曜日にN法人の訴状を
 提出してくださいって」


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訴状の検討(その5)~併合審理

K:「昨日の宿題はどんな調子だい?」
S:
「行訴法16から19条は、当事者が併合を求めるものです
 これに対し、裁判所の職権で併合するのは、
 『弁論併合』といって別の手続です

弁論併合は、行訴法7条により、民訴法が適用され、
民訴法1521に基づき、併合されます」

K:「訴訟をするうえでは、どこが違うかな?」

S:「要は1つの事件か、2つの事件になるかってこと?」

K:「そうだね。訴えの併合が認められれば、事件は1つ
事件が1つか2つかで異なるのは訴額と貼用印紙額

でも、実は印紙額の差額は数万円で、訴額に比べたら
クライアントにとっても、訴額が大きければ別だけど
実は大差ないんだ

だから、併合の訴えが認められるかどうかより、
弁論併合されるかが、我々の実務には影響が大きい

弁論の併合をしてもらえると、
当事者は、証拠や準備書面を毎回2つ用意したり、
読んだりする必要がないから、当事者のメリットに
なるのはもちろんだけど、裁判所だって、
同じような判決を2つ書かなくていいから、楽だよね」

S:「税務訴訟で、弁論が併合されるケースは
どんなケースがあるのかしら?」

K:「今回のN法人のような併合の訴えができるのも、
平成17年の最高裁判決の解釈後といえるから、
併合の訴えができるケースは少ないだろうな

 裁判所が弁論を併合したと思われるケースでは、
同じ組合の複数の組合員による取消訴訟があったな
事務所で扱った事件にも、同族会社とその株主間や
同族会社の関係会社間の資産の譲渡価額など寄附金と
受贈益が二者間に生じるケースも併合された

 どれも、裁判所が自ら併合を認めたものだ」

S:「これらも、関連請求でよいのにね。。。
裁判所は印紙代が惜しいのかしら??」

K:「まさか! 行訴法上、関連請求にあたらない
という解釈が先行してしまったからだと思うよ。

 争ってみたら、面白いだろうな」

S:「ところで、東京地裁とか、事件数の多い裁判所では
併合するような事件があるって気づかないかもしれないわ」

K:「そんなときには、当事者側から、裁判所に対して
弁論併合してくださいって、
併合審理の申立て』をするのさ」

S:「なるほど~そんな方法もあるのね
まだまだ、税務訴訟の奥は深いって感じ」

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訴状の検討(その4)~併合の訴えの分類

K:「小百合さん、おはよう
行訴法16条から19条は、確認したかい」

S:「おはようございます。今日は朝から講義ですか?
そんなに張り切ってくれなくていいんだけど・・・」

K:「何かいったか? 回答は?」

S:「はいはい。わかりました。先にちょっとコーヒー
飲ませてください。昨日、遅かったから眠くて・・・」

K:「10時からクライアントと打合せして、
そのまま外出してしまうから、早くしてくれ」

(木下先生にもうんと濃いコーヒーを飲ませちゃおっと!)

S:「木下先生もコーヒーどうぞ」

K:「おう。ありがと。うわっ、苦っ!!」

S:「へへっ!目が覚めるでしょう
併合ちょっと詳しくなっちゃいましたよ

16条から19条は当事者からの併合の訴え、
つまり、1つの訴訟手続での審理を求めることを
許容する範囲を定めていました。」

K:「それで、どんな場合に併合の訴えはできるのかな?」

S:「どの場合も13条の関連請求に該当すれば、できます
だから、関連請求に該当するか検討してたのでした」

K:「やっとつながったようだな。
じゃあ、16条から19条の違いはなんだ?」

S:「16条は、1人の原告が1人の被告に複数の請求をする場合
17
条は、複数の原告が1人または複数の被告に請求する場合
18
条は、第三者がその訴訟の当事者の一方を被告として訴える場合
最後に、19条は、原告が後から別の訴えや別の被告を相手に訴える場合です。
でも、なんだか、ごちゃごちゃして・・・」

K:「わかりやすく、整理してみようか

まず、訴える時期で区別して、
提起時に最初から併合の訴えをする場合と、
当初の訴えの係属後に追加的に併合の訴えをする場合
にわけられるね。

前者を『原始的併合』、後者を『追加的併合』というんだ

次に、当事者の数で区別して、
1
人の原告対1人の被告で複数の請求の場合と、
複数の原告からの、又は複数の被告に対する請求の場合
にわけられる。

前者を『訴えの客観的併合』とか『請求の併合』と
後者を『訴えの主観的併合』とか『共同訴訟』というんだ

それぞれ組み合わせて」

といいながら、木下先生は、ホワイトボードに書いていきます。

≪時期≫   ≪当事者の数≫ ≪適用条文≫

原始的併合 + 客観的併合 = 16
+ 主観的併合 = 17

追加的併合 + 主観的併合 = 18
+ 主観的併合
 or客観的併合 = 19

S:「先生の板書ですと、18条と19条は同じみたいですが?」

K:「いや、18条は当事者でない第三者が行うもので
19
条は原告が行うものだから、違うよ。こうかな?」

≪時期≫        ≪当事者の数≫ ≪適用条文≫

原始的併合      + 客観的併合 = 16
〃        + 主観的併合 = 17

追加的併合(第三者) + 主観的併合 = 18
〃   (原告)   + 主観的併合
                  
 or客観的併合 = 19

S:「そうか、当初の訴えの後からだと、原告は
客観的併合も主観的併合もできるけど
第三者が加わるには、主観的併合しかできないものね」

K:「では、N法人事件について結論を」

S:「はい。今、N法人は複数事業年度の処分についての
取消訴訟を提起しようとしています。
つまり、1人の原告が最初から複数の請求を
するケースですから、16条ですね」

K:「そうだ。問題は、もし併合の訴えが認められなかったら
どうなるかだ」

S:「そうなんです。でも、大丈夫でした!
関連請求に当たらず、併合の訴えの要件が欠けていても、
それぞれが独立の訴えとして要件を備えていれば、
独立の訴えとして取り扱われる
っていうのが

裁判例・通説・実務のようです」

K:「実務上はこの点が一番重要だ。よく気づいたね
弁護士のミスで、訴えの利益がなくなってしまったら
大変だからな。

ところで、併合されてなくても、書面は1つというのが
あっただろ」

S:「そうですね。複数事業年度でも、平成17年の最高裁までは
関連請求でないという実務だったようですし、
木下先生に見せていただいた訴状もそうでしたね。
それに、事務所のほかの事件でも同じでした。

 あれ? だけど、書面は別々、審理は一緒っていうのも
あったような気がします。

どこが違うのかしら? 関連請求に該当しないから、
併合の訴えはできないという場合でも、
書面や審理の一部は一緒にできるってこと?

 どうしてできるのかしら?」

K:「じゃあ、それも宿題!」

S:「えー! ここんとこ、毎日、宿題攻めですよー
たまには、休日をください!」

K:「甘いっ! そんなこといってると補佐人失格だぞ!」

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