二重起訴の禁止(その2)
B:「小百合くん、東京とさいたまの両方に提訴できない
法律の根拠はわかりましたか」
S:「はい。民訴法142条に『裁判所に係属する事件については
当事者は、更に訴えを提起することができない』と
規定されていました。
二重起訴というほか、重複提訴ともいうようですね。」
B:「どういう事件が対象になるのかわかりますか」
S:「民事訴訟法上は、どのような訴訟が対象となるのか
議論のあるところのようですが、簡単にいうと
当事者が同じかどうか(当事者の同一)と、
審判対象(訴訟物)または争点(攻撃防御方法)が同じか
(審判対象の同一・近似)という点で、判断されます」
B:「では、N法人事件について、当てはめるとどうなりますか」
S:「N法人の課税処分取消訴訟の当事者は、N法人と国です。
それから、訴訟物は、課税処分の違法性一般です。
したがって、N法人は1つの課税処分について、
東京地裁とさいたま地裁に重複して提訴できません」
B:「そうですね。それに、東京地裁に二度提訴もできませんね。
税務訴訟は、不服申立前置が採用されていますから
提訴までの期間制限もあり、二重起訴が問題となるケースは
ないでしょうね」
S:「そんなことないんです。意外とあるものですね。
税務訴訟で二重起訴とされた裁判例も検索してみました」
B:「おや、どんなケースがあるのですか」
S:「高裁係属中の更正処分の無効確認を求める訴えと
同じ更正処分の無効確認をも求める訴えを
地裁に起こしたケース(※1)や
還付金の滞納国税充当処分に係る審査請求の裁決を
求める訴えと、裁決不作為の違法確認の訴えを提起した後、
裁決がされたため、後者の訴えを、『裁決が違法である』
という訴えに変更したケース(※2)がありました」
B:「ずいぶんと無茶な提訴をしたものですね。本人訴訟ですか」
S:「そうです。代理人名が判決文にないので、本人訴訟のようです」
B:「やはりね。弁護士がこんな、明らかに二重起訴になる
ケースで提訴することはないでしょうからね。
ところで、小百合くん、今度は税理士のP先生からの相談です。
どうやら、顧問先から損害賠償請求をされたようですよ。
急ですが、今週の木曜日の予定はどうですか?」
S:「木曜日、空いております」
B:「では、木下先生と一緒に面談をお願いします。
概要はメールを転送しますから、確認しておいてください」
S:「はい、かしこまりました」
◎ ◎ ◎
【本日の参考文献】
高橋宏志『重点講義 民事訴訟法 上』有斐閣(2005)108頁以下
【本日の裁判例】
※1 名高判平成7年3月30日(原審:名地判平成6年10月28日)
※2 東高判平成11年1月28日(原審:東地判平成10年5月12日)
| 固定リンク


最近のコメント