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2009年2月

訴状の検討(その3)~関連請求

K:「どうだい?併合の訴えはできると思うかい?」

S:「ええと、木下先生はたしか、行訴法13条と
最高裁の決定がなんとかって、
おっしゃっていたので、
行訴法13条(※1)を
手掛りにしました

13条は、関連請求の移送について規定しているだけで
併合については何にも定めていません

関連請求については、N法人のケースは
13
条の1-5号のどれにも当たらないから
問題となるのは6号と考えました」

K:「調べる手掛りとしては、まずは正解だな」

S:「それで、N法人の件が関連請求に当たるかですが
複数の処分に係る請求となるのは、2号か6
でも、複数の事業年度の処分で一個の手続を構成する
わけではないから、2号には該当しない

そうすると、概括的な規定である6号に該当するか否かが
問題となると思われます」

K:「そうだね。本件が13条の関連請求に当たるかは
6
号の解釈次第だ」

S:「6号には、広義・狭義の2つの見解(※2)があります
平成17年の最高裁決定以前は、同一人に対してされた
複数年にわたる所得税更正処分の各取消訴訟は6号には
当たらないという見解が多数説(※3)だったようです」

K:「そうだ。昨日もいったけど、最高裁決定は
『訴訟に係る各請求の基礎となる社会的事実が
一体として捉えられるべきものであって密接に関連し、
争点も同一である場合には、行政事件訴訟法136号所定の
関連請求に当たる』っていうんだ

これは、複数事業年度の処分にも当てはまるんじゃないか
と思うんだ」

S:「木下先生と同じことを、判タ(※3)に
書いていらっしゃる方がいましたよ(※4)

 ほら、『行訴法の改正で、・・・審理の重複等を回避し
当事者の訴訟追行上の負担を軽減するという点を
重視すべき』で、『同一人に対する複数年の更正処分も
・・・肯定される』ですって」

K:「ホントだ☆ じゃあ、最高裁決定が従来の多数説と
異なる見解を採用したと考えてよさそうだな
とりあえず、今回は、これで出してみよう」

S:「あのー、関連請求かどうかの解釈については
わかりましたが、併合の訴えができるかどうかと
関連請求かどうかは、どう繋がるのですか?」

K:「はぁ? もう調べたんじゃないのか?
併合の訴えについては行訴法16条から19条だ
じゃあ、これは明日までの宿題だ」

S:「えー! また宿題ですか。。。聞くんじゃなかった!」

   ◎        ◎        ◎

※1【行政事件訴訟法13条が定める関連請求】
1
当該処分又は裁決に関連する原状回復又は損害賠償の請求
2
当該処分とともに一個の手続を構成する他の処分の取消しの
 請求

3
当該処分に係る裁決の取消しの請求
4
当該裁決に係る処分の取消しの請求
5
当該処分又は裁決の取消しを求める他の請求
6
その他当該処分又は裁決の取消しと関連する請求

※2【行訴法136号の「関連する請求」の意義

   1号ないし5号に該当する場合に準ずる程度に当該取消訴訟と密接な関係があり、これと一括して処理するのが適当と認められるような請求であるとの見解

   ①に限らず、事実に関する争点が相当程度共通し、
かつ、各請求の基礎となる社会的事実が同一ないし
密接に関連するものも含まれる
とする見解

従来、実務では、②の見解に立つ裁判例もありましたが、①の見解が多数説とされていました(南博方他編「条解行政事件訴訟法 第2版」弘文堂350-351頁(藤山雅行))。

※3「判タ」は「判例タイムズ」誌の略称です。
2回発行で、毎回多くの裁判例を掲載するほか
評釈や論文も掲載しています。
裁判官が書かれているものも多いのでとても参考になります。

なお、こういう文献の調査をするのに便利な手引書は
いしかわまりこ先生の『リーガル・サーチ』です。
最新は第3版(20085月)です。
文献調査については、またいつか、お話します。

※4福田千恵子「行政事件訴訟法136号所定の関連請求に
当たるとされた事例」判タ1215284頁引用の
杉原則彦・法曹時報582655

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訴状の検討(その2)~併合の訴え

S:「あれっ? 木下先生、この貼用印紙額、修正されてますが
数字を間違えるなんて、やだわ、もう税理士失格でしょうか?」

K:「いや、ある意味では間違えてなかったし、
お客さんに請求した印紙額と同じだったよ
だけど、今回ちょっと裁判所にチャレンジしてみようと
思うんだ」

S:「チャレンジですか?」

K:「そう。訴額や貼用印紙額については、裁判所、特に
書記官さんが詳しいから、いつも従ってきたんだ

だけど、僕も前から疑問に思っていて
行政事件で併合できる事件とできない事件とを
法的に区別できるようにしたいと思ってね

この前、行訴法の関連請求についての
最高裁の平成17年の決定(※1)を見つけたんだ

決定では、訴訟に係る各請求の基礎となる社会的事実が
一体として捉えられるべきものであって
密接に関連し、争点も同一である場合には、
行政事件訴訟法136号所定の関連請求に当たる
と解している

行政訴訟の訴訟物は行政処分の違法性一般だろ


つまり、訴訟物の同一性は、処分の同一性で画される
だから、一人の納税者に対する異なる年分の処分は
複数の処分になる。
それで・・・」

S:「あのぅ・・・最速で学ぶ行訴法講義の途中ですが
ちょっとぉ、いいですかぁ?


ヘイゴウ、カンレンセイキュウ、ソショウブツ、
イホウセイイッパン、なんとかのドウイツセイって、
古代遺跡とか、希少動物の名前を聞いてる気分
なんですけどぉー?」

K:「え? わかんないの?」

S:「簡単に言うと、そういうことです」

K:「普通、訴訟は、1人の原告が1人の被告を相手に
単一の請求をする訴え
、これを『単一の訴え』といい
この『単一の訴え』が基本形だ

しかし、この『単一の訴えを複数結合した訴えも
一定の範囲で許容されている

これが『併合の訴え』だ(※2)
ヘイゴウは合併の文字を反対にして『併合』と書く
つまり、複数の原告または被告、あるいは
2
つ以上の請求を1つにまとめること

  N法人は2事業年度分の更正処分を受けてるだろ?」

S:「はい。確かに2事業年度分です」

K:「そうすると、処分は事業年度ごとに行われるから
行政法上、2つの処分があったとカウント
される
ここまではいいかな?」

S:「処分の数2つ。これを併合するわけですね」

K:「まぁ、アセるな。ゆっくりいこう。
処分が2つだから、『訴訟物』も2つ


『訴訟物』は、徳田先生(※3)によると
訴えの内容としての原告の被告に対する関係での
一定の権利主張

すなわち、『訴訟における審判の対象』のことだ

課税処分の取消請求訴訟の場合
訴訟物』は、その処分が適法か違法か、


課税処分の主体・処分の内容・処分の手続・
処分の方式等のすべての面における違法性
』、つまり、

処分の『違法性一般』だ(※4)

違法性は処分ごとに判断されるから、処分が異なれば、
訴訟物も異なることになる」

S:「木下先生、行訴の教授みたいで、カッコいい!」

K:「こらっ!茶化すな」

S:「申し訳ありません。ご講義の続きをお願いします」

K:「だけど、N法人のように、処分は2つでも
基礎となる事実関係は同じで事業年度が異なるだけなのに
訴状を2つ、だから、訴額も印紙も別々、

その後の審理でも書面を2つって面倒だろ?

そこで、併合の訴えができるか問題となるわけさ
おっと、出かける時間だ。続きは明日にしよう

小百合さんも、本件で併合の訴えが可能か考えてみてくれ」

   ◎        ◎        ◎

【本日の参考文献】

※1平成17329日最高裁第三小法廷決定
  (民集592477頁)
※2南博方他編「条解行政事件訴訟法 第2版」
  弘文堂325頁(市村陽典)

     ≪第3版補訂版が出ています。≫

※3中野貞一郎他編「新民事訴訟法 第2版補訂版」
有斐閣37頁(徳田和幸) ≪第2版補訂2版が出ています。≫

※4前掲※2(165頁)(人見剛)

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訴状の検討(その1)

K:「小百合さん、起案してもらった訴状チェックしたよ」

S:「うわっ!真っ赤ですね~
もうちょっとできてると思ったけど・・・」

K:「そんなことないよ。細かな間違いや言回しの問題で
致命的な間違いはなかったから・・・

そのまま提出しても多少の補正はいるかもしれないけど

問題はないさ

ただ、僕がモットーとしているように税務訴訟でも訴状でも

何でも 『まねぶ』 のが早いんだ!」

S:「?まねぶ?ですか。何ですか、それ?」

K:「うん。先例や秀作に倣えってことかな
木山弁護士がブログで紹介している勉強法の本にも書いてあるよ


税務訴訟のほとんどは取消訴訟だから
たとえば、僕がこの前、小百合さんに渡した訴状あるだろ

事務所の税務訴訟の棚にある他の事件の訴状もあるから

担当の先生に断れば、大抵見せてもらえる

それから、税務訴訟の判決は山ほどあって
公刊されたり、データベースに収録されたりして
もう、だいぶいろんな判決を読んだだろ?」

S:「そうですね。数だけは読みました。頭には残ってないけど・・」

K:「そういう訴状や判決で積み重ねられた経験を 『まねぶ
つまり、マネるんだ。

特に、請求の趣旨の言回しなんかは、特有の書き方があるから
僕みたいにその言回しに慣れ親しんでくると


そうじゃない言回しは、間違ってなくても、
読みにくいし、間違ってるんじゃないかと考えてしまう

裁判官も同じじゃないかな?

それで、請求の趣旨は、なるべく判決の言回しと
同じような表現を使うといいんだ」

S:「個性的なほうが目立っていいじゃないですか~?」

K:「いや、気持ちはわからないではないけど
特に訴状は個性的でなくていい

個性は、その後の書面の理論や内容で発揮してくれたまえ」

S:「そんなの、『原告独自の理論で失当である』って
なっちゃいませんか」

B:「ハハハ・・・いいのさ、たまには被告を驚かすくらいの
理論があるほうが・・・」

S:「サンタ所長、いつのまに?
そういえば、所長はいつも驚かすことばかり考えてますね」

B:「そうかな。。。でも、誰でも考えつくことばかりでは
税務訴訟なんて勝てないし、やっていけないさ」

K:「あのぅ・・・おっしゃるとおりですが
それはほどほどにしていただく方がよいときも・・・」

B:「木下さんの書面は、読みやすさで個性を発揮してますね
とてもよいと思いますよ。では、あとはよろしく!」

K:「また、言いたいことだけいって、外出ですか
所長もチェックいれてくださいよ」

B:「みたよ。うん。小百合さん、よくできてましたよ」

S:「それって、見てないってことですね!
木下先生のチェックは真っ赤ですもの」

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