回答編(その1)
前回の(例1)の回答です。
(例1)増額更正処分の後、増額再更正処分がされた場合 でした。
当初申告の税額 1億円
増額更正処分 1.2億円
増額再更正処分 1.5億円
Q① どちらの更正処分の取消しを求めればよいか
2つの更正処分について、それぞれ別個の処分として併存するという考え方(併存説)と当初の更正処分は後に行われた再更正処分に吸収され、独立の存在を失うという考え方(吸収説)があります。
判例は、後者の吸収説、すなわち、増額再更正処分がされると、当初の更正処分の取消しを求める訴えの利益はなくなるという考え方を採用しています。
吸収説は、「更正・決定も増額再更正も、一個の納税義務を確定させる処分であり・・・実体的に一体不可分であるから、これを分断して部分ごとに認定し、納付すべき税額を部分的に確定させることはできない」(泉徳治ほか司法研修所編『租税訴訟の審理について(改訂新版)』法曹会(2002))という理由によるものです。
したがって、この場合は、後に行われた増額再更正処分の取消しを求めて争うことになります。
Q② 取消しを求めることができる税額はいくらか
取消しを求めることができるのは、1.5億円-1億円=0.5億円か、それとも1.5億円-1.2億円=0.3億円のいずれでしょうか。
吸収説の考え方から、0.5億円となります。
しかし、先の1.2億円の更正処分について、不服申立て期限や提訴期限が過ぎ、確定していた場合には、0.3億円となると解されています。
ここまで、基本の「き」ですね。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。以下は、マニアックですので、関心に応じて読み飛ばしてくださってかまいません。
ということで、納税者が先の処分について、争っているからと考えて、後の処分について報告してくれなかった場合には、不服申立て期限を過ぎると、先の処分まで確定してしまいますから、大変なことになります。
「教えてくれなかった」などとして、税賠事件や弁賠事件に発展しないよう、専門家として予め注意喚起が必要ですね。
ところで、後の更正処分が期間をあけず、続けて行われた場合は、最初の処分について、不服申立てをしているうちに、併合されることにより、訴訟になる頃には通常は一緒になっているので問題にならないのですが、更正処分がある程度の期間をあけて行われた場合、例えば、最初の処分について、既に控訴審で争っている場合などは、どうでしょうか。
特に、処分理由が当初の理由とは何ら関連しない別個の理由だった場合を想定してみてください。
上記のとおり、吸収説に立つと、先の処分について効力を失うため、後の処分について訴訟を提起することになり、その場合、先の処分については手続の二度手間、費用の二重負担になり、問題があるように思います。
反対に、先の処分が控訴審に継続しているからといって、後の処分について控訴審から争うというのでは、課税処分取消訴訟の不服申立前置主義や訴訟の三審制を前提とする裁判制度に反することになるのではと思われます。先の処分に係る理由のみを争うのでしたら、訴えの変更で対応できますが・・・
最高裁判例解説(昭和42年425頁以下)でも述べられているとおり、本来的には、2度の処分がされたことにより、納税者が不利益を被らないよう、「事実審段階において是正されるべき問題」であると考えます。
したがって、裁判所の訴訟指揮により、処分経緯等を勘案した相当の裁判が受けられることを求めたいと思います。
個人的には、当初の更正処分の訴訟進行状況によっては、争点主義的に処分理由ごとに確定していくことができないものかと考えます。
しかし、その場合には、あくまでも訴訟物が「処分の取消し」であるため、先の処分の一部の税額だけを確定することができないという問題が残ります。
そこで、先の処分について争っていた理由部分のみの中間判決を下し、後の処分については、その理由の部分については争点としないとすることにより対応できるのではと考えたのですが、いかがでしょうか?
この点について、事前に裁判所の指導を仰ごうとしましたが、実際の訴訟でないと判断できないと断られてしまいました。幸いにも、その事案は後続の処分が行われていないため、本日現在、問題が起きないまま、東京地裁係属中です。今後、処分されたら・・・いや、処分されないのが何よりですね。
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