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2008年12月

回答編(その4)

問題を年越しするのは、気になるので、(例4)の回答です。 

(例4)繰越欠損金額を減少した処分の取消しを求めるもの でした。
当初申告 繰越欠損金額 3億円 納付すべき税額0
更正処分 繰越欠損金額 1億円 納付すべき税額0 

Q① どの更正処分の取消しを求めればよいか 

といっても、この問題の更正処分は1つでしたから、
「更正処分の取消しを求めることはできるか」とすべきでした。 

納付すべき税額は0円のまま、変更されていませんから、
勝訴しても、税金が戻ってくるわけではありません。
この場合、そもそも訴えの利益があるのでしょうか。 

しかし、繰越欠損金額が3億円から1億円に減額されています。
ということは、更正処分によって、将来、発生する税額が増加するという影響があります。 

したがって、繰越欠損金を減額する更正処分についても、訴えの利益があり、取消しを求めることができます。 

簡単でしたね! 

Q② 取消しを求めることができるのはいくらか 

この(例4)は、こちらがメインです。 

訴状には「訴訟物の価額」を記載しなければなりませんから
いくらの取消しを求めるか、算定する必要があります。 

この場合、訴えの利益はあるものの、増差税額がありません。
訴訟物の価額が0円では訴えの利益がないようにみえます。 

どうすればよいでしょうか? 

民訴法82項に基づき「算定不能」のため、140万を超えるとみなされるのでしょうか? 

答え:訴訟物の価額は「繰越欠損金額差額に法人税率を乗じた額」と、
   ある裁判所で指導されました。 

現行の法人税率は30%ですから、3億円-1億円)×30%6000万円が、訴額となります。 

ところが、

答え:民訴法8条2項の訴額算定不能のため、140万円とみなされ
   「民事訴訟費用等に関する法律」4条2項により160万円とみなされる
   と、同じ裁判所の別の裁判部で指導されました。

どちらでしょうね?
回答にならなくて申し訳ありません。

では、皆様よいお年をお迎えくださいませ。 

      ◎        ◎        ◎ 

K:「小百合さん。今日は仕事納めだけど、サンタ所長が外部打合せで、事務所に戻れないから、今年は納会なしだって」 

S:「そう、残念ですね。年末ギリギリまでサンタ所長はお忙しいのですね」 

K:「それに、来年は100年に1度の経済危機が訪れる可能性があるけど、そういうときこそ我々が社会に役立つチャンスだから、大いに、頑張りましょうだって」 

S:100年に1度ですか。生きててよかった・・・じゃなくて、仕事があることに感謝ですぅ。ところで、木下先生は年末年始休暇はハワイですか?それとも・・・」 

K:「元旦以外は仕事だよ、シ・ゴ・ト!」 

S:「えーっ!木下先生はホントにお仕事好きなんですね~
お休みは家族サービスやリフレッシュしないとですよ!
では、私はお先に失礼します。来年もよろしくお願いします」 

K:「だけど、訴状はいつできるんだ!? まあ、まだ期限あるからいいか。来年早々には頼むよ」 

S:「はーい、承知してま~す」

      ◎        ◎        ◎

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回答編(その3)

B:「小百合くん、最近、ブログの更新が滞っているようですね。
それに、会話がないから、つまらないっていう声が多いよ」 

S:「年末は法律事務所も忙しいのですよ。それに、パソコンの入れ替えもあったりしたので、デスク回りの整理をしていました。」 

B:「それって、年末と関係ないじゃないか! しかも1週間もかかるのか! 小百合くんのデスク回りは一体どんな状態だったんですかね??」 

S:「おかげさまでパソコンが速くなってとてもよい感じです(^_^)デスク回りもすっきりきれいに片付きましたし、もう年末年始休暇突入って気分です」 

B:「おいおい、まだ、もう1日あるから、最後まで仕事してください」 

S:「はい。では、年末最後の回答として、例題3をサンタ所長に回答していただくというのは、いかがでしょうか?」 

B:「あーいや。私はこれから来客がありますから、自分でやってください」 

      ◎        ◎        ◎ 

ということで、遅くなりましたが、前回の(例3)の回答です。 

(例3) 更正の請求の後、通知処分と増額更正処分があった場合 でした。 

当初申告                    1億円 

更正の請求                 9千万円 

更正すべき理由がない旨の通知処分  (1億円) 

増額更正処分                1.2億円 

Q① どちらの更正処分の取消しを求めればよいか 

更正すべき理由がない旨の通知処分増額更正処分も、納税者にとっては、不利益処分ですから、いずれの処分の取消しを求める訴えの利益も認められます。 

では、どちらの処分の取消しを求めればよいでしょうか。 

裁判例は、両処分の前後を問わず、「通知処分は増額更正処分に吸収される」と解して、増額更正処分の取消しを求めれば足りるとする更正処分吸収説(東高判平成4.6.29ほか) 

「通知処分も一種の更正処分」と解し、「最初の処分が後にされた処分に吸収されて消滅する」とする後行処分吸収説(神地判平成4.12.25)、 

それぞれにつき取消しを求める固有の利益がある」と解して、いずれもが適法であるとする併存説(東地判平成1.7.26)、 

に分かれています。 

増額更正処分吸収説が有力説ですが、確定的な見解に至っていません 

このように解釈が分かれるのは、裁判所が納税者に訴えの利益を失わせることのないように配慮してくれているからかもしれません。 

しかし、納税者としては、処分の先後を問わず、両方の処分について取消しを求めることにより、「本案前の申立て」の答弁がされ、却下されることのないようにすべきと思われます。
特に2つの処分が期間をおいてされた場合には要注意です。 

Q② 取消しを求めることができるのはいくらか 

まず、処分が同時にされた場合を考えてみましょう。
A:増額更正処分と当初申告額との差額1.2億円-1億円=2千万円
B:更正の請求の額との差額1.2億円-9千万円=3千万円
この場合、Bにより、3千万円分の取消しを求めることができるとされています。 

不服申立てをして訴訟に至った場合など先行処分が確定しないうちに、次の処分がされて争う場合も上記と同じです。 

しかし、先行処分が不服申立期間等の経過により確定した後に、次の処分がされた場合は、異なります。 

通知処分が先行し、確定した後に増額更正処分がされた場合は、
増額更正処分と通知処分後の額(つまり当初申告額)との差額
1.2
億円-1億円=2千万円 についてのみ
取消しが求められると解されています。 

反対に、ケースとして稀と思われますが、増額更正処分が先行し、確定した後に通知処分がされた場合は、Q①のどの説に立つかにより解釈が分かれます 

有力説である更正処分吸収説によれば、増額更正処分を確定させた以上、通知処分を争う訴えの利益がないことになります。 

併存説や後行処分吸収説によれば、通知処分後の額(つまり当初申告額)と更正の請求の額との差額1千万円分(1.1億円までの額)が争えるものと思われます。

 

実際にそのような裁判例もありますが、確定的なものではありませんので、増額更正処分を確定させない手続が求められるでしょう。 

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回答編(その2)

前回の(例2)の回答です。

(例2)増額更正処分の後、減額再更正処分がされた場合 でした。

当初申告      1億円

増額更正処分 13千万円

減額更正処分 12千万円

Q① どちらの更正処分の取消しを求めればよいか

減額更正処分は納税者にとっては、税額が取り消されるという有利な処分、つまり利益処分ですから、こ取消しを求める訴えに利益はありません

したがって、専ら先行の増額更正処分の取消しを求めることになります。

Q② 取消しを求めることができるのはいくらか

増額更正処分のうち、その後の減額更正処分により取り消された部分、事例では13千万円-12千万円=1千万円分は増額がなかったことになり、争うことができません。

したがって、12千万円-1億円=2千万円の取消しを求めることになります。

ここまで、基本の「き」です。

前々回にご紹介した実務書にも書かれていますので、ご存知の方も多いと思われます。

では、もし、減額更正処分が先で、増額更正処分が後にされた場合は、どうでしょうか。

①については、増額更正処分を争うことで見解の相違はないと思われます。

②については、当初申告1億円、減額更正9千万円、増額更正12千万円ということになります。

この場合、当初申告と増額更正の差額2千万円しか争えないのか、減額更正と増額更正との差額3千万円を争えるのか、どちらでしょうか。

私は3千万円分が争えると思います。たぶん、正解のはずです。

そうすると、更正をする場合に、まず増額更正処分のみを行い、減額更正処分を後から行うとすると、争える額が減額分だけ自動的に減らされてしまうことになります。

更正処分の中に増額理由と減額理由がある場合も同じ結論です。

どこかおかしくないでしょうか? 減額理由が単純な計算間違いで、増額理由が事実や解釈に争いがある場合を想定すると、おかしさに気づいていただけるものと思います。

個人的には、理由ごとに争うことができないとおかしい(納税者に不利になる)と思うのですが、そうはなっていないようです。これは、納税者が自ら正しい税額を計算して、申告するという申告納税制度の怖さと考えるほかないですね。

というわけで、皆様、申告は誤りのないよう、正確に行いましょうね!(申告業務を行うことから開放された気楽さゆえ、お許しください。)

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回答編(その1)

前回の(例1)の回答です。

(例1)増額更正処分の後、増額更正処分がされた場合 でした。

当初申告の税額  1億円

増額更正処分  1.2億円

増額再更正処分 1.5億円

Q① どちらの更正処分の取消しを求めればよいか

2つの更正処分について、それぞれ別個の処分として併存するという考え方(併存説)と当初の更正処分は後に行われた再更正処分に吸収され、独立の存在を失うという考え方(吸収説)があります。

判例は、後者の吸収説、すなわち、増額再更正処分がされると、当初の更正処分の取消しを求める訴えの利益はなくなるという考え方を採用しています。

吸収説は、「更正・決定も増額再更正も、一個の納税義務を確定させる処分であり・・・実体的に一体不可分であるから、これを分断して部分ごとに認定し、納付すべき税額を部分的に確定させることはできない」(泉徳治ほか司法研修所編『租税訴訟の審理について(改訂新版)』法曹会(2002))という理由によるものです。

したがって、この場合は、後に行われた増額再更正処分の取消しを求めて争うことになります。

Q② 取消しを求めることができる税額はいくらか

取消しを求めることができるのは、1.5億円-1億円=0.5億円か、それとも1.5億円-1.2億円=0.3億円のいずれでしょうか。

吸収説の考え方から、0.5億円となります。

しかし、先の1.2億円の更正処分について、不服申立て期限や提訴期限が過ぎ、確定していた場合には、0.3億円となると解されています。

ここまで、基本の「き」ですね。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。以下は、マニアックですので、関心に応じて読み飛ばしてくださってかまいません。

ということで、納税者が先の処分について、争っているからと考えて、後の処分について報告してくれなかった場合には、不服申立て期限を過ぎると、先の処分まで確定してしまいますから、大変なことになります。

「教えてくれなかった」などとして、税賠事件や弁賠事件に発展しないよう、専門家として予め注意喚起が必要ですね。

ところで、後の更正処分が期間をあけず、続けて行われた場合は、最初の処分について、不服申立てをしているうちに、併合されることにより、訴訟になる頃には通常は一緒になっているので問題にならないのですが、更正処分がある程度の期間をあけて行われた場合、例えば、最初の処分について、既に控訴審で争っている場合などは、どうでしょうか。

特に、処分理由が当初の理由とは何ら関連しない別個の理由だった場合を想定してみてください。

上記のとおり、吸収説に立つと、先の処分について効力を失うため、後の処分について訴訟を提起することになり、その場合、先の処分については手続の二度手間、費用の二重負担になり、問題があるように思います。

反対に、先の処分が控訴審に継続しているからといって、後の処分について控訴審から争うというのでは、課税処分取消訴訟の不服申立前置主義や訴訟の三審制を前提とする裁判制度に反することになるのではと思われます。先の処分に係る理由のみを争うのでしたら、訴えの変更で対応できますが・・・

最高裁判例解説(昭和42年425頁以下)でも述べられているとおり、本来的には、2度の処分がされたことにより、納税者が不利益を被らないよう、「事実審段階において是正されるべき問題」であると考えます。

したがって、裁判所の訴訟指揮により、処分経緯等を勘案した相当の裁判が受けられることを求めたいと思います。

個人的には、当初の更正処分の訴訟進行状況によっては、争点主義的に処分理由ごとに確定していくことができないものかと考えます。

しかし、その場合には、あくまでも訴訟物が「処分の取消し」であるため、先の処分の一部の税額だけを確定することができないという問題が残ります。

そこで、先の処分について争っていた理由部分のみの中間判決を下し、後の処分については、その理由の部分については争点としないとすることにより対応できるのではと考えたのですが、いかがでしょうか?

この点について、事前に裁判所の指導を仰ごうとしましたが、実際の訴訟でないと判断できないと断られてしまいました。幸いにも、その事案は後続の処分が行われていないため、本日現在、問題が起きないまま、東京地裁係属中です。今後、処分されたら・・・いや、処分されないのが何よりですね。

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訴額と訴えの利益

S:「では続きまして、2番目の質問です。訴額はいくらでしょうか? 裁決書のどこにも記載が見当たりません」

K:「計算するんだよ。小百合さん、時間があったら、訴額を計算してくれるかい?」

S:「え? 訴額は自分で計算するんですか?」

K:「税理士のほうが数字は詳しいからね! 簡単に言えば、『増差額』ってやつだよ」

S:「なんだ、増差額だったのね。更正処分の通知書を見れば、すぐわかるわ」

K:「おっと、地方税や附帯税はいれないでくれよ。それに、争うのは処分全部ではないはずだ」

S:「あ、そうでしたね。処分には交際費認定とかもありましたものね。計算しないと数字はでませんね」

K:「よろしく頼むよ」

      ◎        ◎        ◎

訴額は簡単には取り消して欲しい税額相当額です。

税額計算は税理士の真骨頂ですから、これ、できないと問題ですね。

最近は自動計算ソフトがあって、修正申告もそれで対応できたりするから、税額まで計算するのって、税理士試験以来ってことになったり・・・

私が前に勤めていた事務所は、毎回地方税まで手計算した上で、 入力してたけど、今でもやってるかしら??

知り合いの税理士のセンセイも自分で計算したのより、コンピュータが正しかったって、悔しがってたし・・・

実際には訴額の計算は簡単なものばかりではなく、複雑なものもあります。

留保金課税がある場合や国外所得金額に増減があった場合など、面倒ですが、これは、単純に税額計算上の問題です。

訴額と関連して、「訴えの利益」があるか問題となる場合があります。

例えば、処分が重ねて行われた場合や税額が算定されない場合など、法解釈が問題になるケースや解釈が確定していないようなケースです。

ちょっと例を挙げてみましょう。

次の事例について、それぞれ、①取消しを求めることができる更正処分はどの更正処分でしょうか、②取消しを求めることができる税額はいくらでしょうか。

(例1)増額更正処分→増額更正処分(基本の「き」です。)

当初、税額1億円で申告した後、1.2億円の増額更正処分がされ、その後、1.5億円の増額再更正処分がされた場合

(例2)増額更正処分→減額再更正処分

当初、税額1億円で申告し、1.3億円に増額更正処分がされた後、今度は、1.2億円に減額更正処分がされた場合

(例3)更正の請求→増額更正処分

当初、税額1億円で申告したところ、誤りが見つかり、9千万円となる更正の請求をしたところ、これに対し、更正すべき理由がない旨の通知処分と1.2億円の増額更正処分がされた場合

(例4)繰越欠損金額を減少した処分を求めるもの

当初、繰越欠損金額3億円、納付すべき税額0円で申告した後、更正処分により、税額は0円のままであるが、繰越欠損金額が1億円となった場合

      ◎        ◎        ◎

≪回答を考える方へ≫

(例3)までは税務訴訟の実務書に載っています。

ご参考までに、私が参考にしている実務書を以下に挙げます。ここで取り上げた事例以外の事例も載っていますので、参考になると思います。

中尾巧 『税務訴訟入門 第3版』 商事法務(2007

大野重國・木下雅博・東亜由美 『租税訴訟実務講座 改訂版』 ぎょうせい(2005

泉徳治ほか司法研修所編『租税訴訟の審理について(改訂新版)』 法曹会(2002)

(例4)は解説を見たことがありません。実務上は(例4)だけでなく、解釈が分かれるケース、解釈に疑問を抱くケースにたびたび出会います。

次回以降の回答編では、そんな実務上の「?」も取り上げようと思います。

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