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2008年11月

管轄

S:「木下先生、N法人の訴状の件、いくつか質問があります。1番目は訴状の宛先です。東京地裁でいいでしょうか。行訴法からすると、東京とさいたまが可能と思いますが・・・」

≪行政事件訴訟法12条≫

1項   取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。

K:「そうだね。たしか、サンタ所長と会社へ資料収集に行ったとき、法務部長が東京でと仰っていたよね。

ところで、相手方が誰になるか、条文で確認したかい?」

S:「はい!そういわれると思って、確認しました。行訴法111項ですよね」

≪行政事件訴訟法11条≫

1項 処分又は裁決をした行政庁(略)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。

1号 処分取消しの訴え 

当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体

S:「で、本件の課税処分をしたのは浦和税務署長で、浦和税務署 は国に所属する行政庁ですから、被告は国になります。

ちなみに被告が国とされる事件は、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限に関する法律、あー舌噛みそう、略して「権限法」1条で、法務大臣が国を代表するとされています。

だから、行訴法の12条に戻って、被告・国の普通裁判籍、つまり法務大臣の所在地を管轄する東京か、処分をした行政庁、つまり浦和税務署の所在地を管轄するさいたまのどちらかの裁判所となるんですよね」

K:「正解!被告適格や裁判管轄は訴訟要件だから覚えておくといいよ。訴訟要件全部については、訴状が完成したら、もう一度チェックするからね」

S:「訴訟要件・・・また新しい用語だわ。覚えることが多くて大変です」

K:「このあたりが、税務訴訟のような行政事件に特有の事項が多いから、最初は覚えることが多くて大変だけど、あとは一般の民事訴訟とほとんど同じだから、大丈夫さ」

S:「そういわれても、一般の民事訴訟も知らないんですけどねー」

K:「そうだったか。でも、一通り覚えてしまえば、税務訴訟だけでなく、いろんな事件でも使えるようになるってことだし、補佐人税理士なんだから、まずは税務訴訟に特有なことから覚えるのが近道じゃないかな」

S:「わかりました。ぼちぼち覚えます」

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訴状起案中です。。。

訴状に必ず記載すべきことは、「必要的記載事項」といって、民事訴訟法133条に規定されています。

民事訴訟法1332

 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 当事者及び法定代理人

 二 請求の趣旨及び原因

あら?たったこれだけ? ずいぶんシンプルな感じです。

N法人の事件では、一号の当事者は提訴するN法人と相手方の国(※相手方が国になることについては、後日、別の回でお話します。)、両者に法定代理人は存在しない・・・で、二号の請求の趣旨及び原因って何でしょう?

請求の趣旨」とは、「原告が請求の内容・範囲を示して、どのような内容の判決を求めるかを簡潔に表示する部分」(中野貞一郎他編『新民事訴訟法講義 第2版補訂版』(有斐閣)48頁、ちなみに5月に補訂2版が刊行されています。)で、実際には、「・・・との判決を求める」というように判決の主文になる部分を書けばいいのね。

N法人の請求は処分の取消訴訟だから、別件の訴状の例のとおり、

「○年○月○日付けの○年○月○日から○年○月○日の事業年度の法人税額等の更正処分のうち、所得金額○○円、納付すべき税額○○円を超える部分を取り消すとの判決を求める」

となるわけね。

で、次の「請求の原因」は、「請求を特定するのに必要な事実」(民訴規531項)ね。この「必要な事実」は「権利の内容・権利の発生原因など」(前掲書49頁)です。

そうすると、更正処分の取消訴訟では、取り消しを請求する権利があるってことを明らかにすればよいのね。

あーだから、ひな型の訴状には、更正処分から裁決までの経緯が時系列で書かれていて、適法に不服申立てを経て、期限内に提訴し、処分の取消しを求める権利があることを明らかにしているのね。(取消訴訟の訴訟要件についても別の回でお話します。)

しかし、実際の訴状には、本来の「請求の原因」以上の事案の内容や当事者名以外のもろもろの事項も書かれています。

これらは、民事訴訟規則53条以下に規定されている「任意的記載事項」に該当します。

だから、記載が欠けていても訴状としての効力に影響はありません。ちょっと安心^_^(条文を書くと長くなるので、適宜、六法を確認してくださいね。)

任意的記載事項として、「請求を理由づける事実」と「事実に関連する事実」(1項)を「区別して記載」(2項)し、事実に関する証拠も記載する(1項)ほか、送達や事務手続上の連絡のために、原告又は代理人の郵便番号・電話番号・FAX番号を記載すること(4項)が求められ、立証を要する事由については書証の写しも添付すること(民訴規552項)になっています。

行政訴訟事件の場合には、訴えが適法であることを証する書類、具体的には更正処分の通知書と不服申立ての経緯を明らかにする書類は証拠として最低限提出するほうが望ましいと思います。

最後に、訴えを提起するには、裁判所の手数料として、印紙を貼って納めなければいけません(民事訴訟費用等に関する法律38条)。手数料の額は訴額(訴訟物の価額)によって、裁判所のごとに定められています。だから、実務上、訴状に訴訟物の価額と貼用(ちょうよう)印紙額も記載しています。

なお、同時に、判決等書類の送達に必要な費用を郵券(郵便切手)で予納することも求められます(同法111213条)。印紙は原則として納め切りですが、予納郵券は実際に使用した以外の残りは判決書の受領時に返却されます。

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訴状を書いてみよう!

B:「小百合くん、この前のN法人の訴訟の件、やはり提訴することになったよ。通常は、訴状は弁護士が書くんだが、木下先生が別件で忙しいようだから、起案をしてみるかい?」

S:「そ、訴状ですか? 何を書けばよいのでしょう?」

K:「あわてなくてもいいさ。後から別件の訴状を添付で送るから、それをアレンジして起案すればいい。最終チェックは僕もサンタ所長もするから、安心しろよ」

S:「はい。ご指導よろしくお願いします!」

      ◎        ◎        ◎

S:「訴状を起案するどころか、見るのも初めてです。訴状には、何を書かかなくてはいけなくて、実際に何が書かれているのでしょう?」

K:「何が書いてあるかは、わかるよね?」

S:「まず、宛先の裁判所に、年月日、代理人名、事件名・・・」

っと、残念がなら、実際の訴状を公開することは守秘義務上できないので、手形訴訟の訴状ですが、裁判所のWEBページのひな型をご参考ください。

http://www.courts.go.jp/osaka/saiban/minji4/pdf/dai3_2/09.pdf

ふむふむ・・・当事者の表示、事件名、訴訟物の価額、貼用印紙額、請求の趣旨、請求の原因、附属書類、年月日、提出者、宛先といろいろあります。サンタ事務所の別件の訴状も、順番は多少前後しますが、基本的には同じです。

S:「木下先生、送信していただいた訴状に書かれていることは全部、記載しなくてはいけない事項でしょうか?」

K:「どうかな? 勉強するつもりなら、起案の前に、法律の規定をみておくといいよ。ちなみに何法かわかるよね?」

S:「行政事件だから行政事件訴訟法かしら?」

K:「うーん。ある意味では正解だけど、ある意味では間違い。行訴法で訴状に関して関係のあるのは7条だけだ」

S:「7条ですね。。。あら?『この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による』だけです。ってことは、民事訴訟法をみないとですね」

K:「そのとおり。あとはよろしく!」

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裁決書が届きました!

―サンタ法律事務所、第九会議室。午前10時―

B:「本日午後の相談の件、裁決書は読んだかい?争えるかな?」

S:「事業体の損益分配割合が問題となっている事案のようですね。裁決書の事実認定が真実としたら難しいかなと思いますが、実際のところはどうなんでしょうか」

K:「それに、裁決書では組合とされているけれど、この事業体の性質も問題になりそうですね」

B:「事実だけでなく、法律解釈も関係あるということですね。最初だから、午後はまず事実を中心に話を聞くことにしよう」

―午後―

サンタ法律事務所、第一会議室。午後14

N法人の法務部長が、いつもと異なり、財務部長と一緒に相談にいらっしゃいました。

      ◎        ◎        ◎

法務部長:「サンタ先生、いつもお世話になっています。今日は、税務の相談ですので、財務部長と一緒に参りました」

B:「こんにちは。税務ということでしたので、弊所も税務の担当弁護士と税理士を同席させていただきます」

K:「弁護士の木下です。よろしくお願いいたします」

S:「補佐人税理士の小百合です。よろしくお願いいたします」

財務部長:「では、早速ですが、事前にご送付したとおりの裁決書が先々週届きまして、内容は棄却という残念な結果でした。当社としては、到底納得できませんので、訴訟で争うつもりです」

B:「弊所でも検討させていただきました。事実だけでなく、法律の解釈の問題もありそうですね。裁決書だけでは不明な点がありますので、事実関係をもう少し詳細に教えていただけますか」

財務部長「はい。裁決書に書かれている事実は当社の認識とだいぶ違いますので、その点からご説明します。そもそも・・・(事実の説明のため省略)・・・という事情なんです」

B:「そうですか。そうすると争う余地がありそうですね。ただ、今のお話を裏付ける証拠はありますか?」

財務部長「それが、非常に少ないために、裁決書でもあのような認定をされてしまったようなんです」

B:「うーん。困りましたね。でも、会社の方が見ても何の証拠にもならないと思われるものが、我々プロの目から見れば、有力な証拠になる場合もありますから、次回は会社で資料を拝見させてください。連絡は木下から致します。」

一同「では、よろしくお願いいたします」

      ◎        ◎        ◎

提訴を予定される方へ

裁決書を受領したら、受領日を確実に記録しておきましょう。

手続上、提訴期限(6月以内)との関係でとても重要です。

訴訟は、当事者本人だけで遂行することも可能ですが、税務訴訟の場合、多くの専門知識や調査を必要としますので、弁護士に委任することが多いと思われます。

その場合、法律事務所へのご連絡は、なるべく早く相談いただけるとうれしいです。

サンタ法律事務所でも、実際に、訴訟段階でなく、税務調査や不服申立て段階から関わることも多いです。

ところで、先日、裁判所に他の事務所の税務訴訟事件の記録を木下弁護士と閲覧してきましが、納税者側の控訴理由書がたった数ページでした。

いくら税務訴訟が勝てない訴訟だからって、数ページで勝てるわけないでしょう!!

もちろん長ければいいってものでもないでしょうが・・・

この数ページの結果が判決で確定しているのですから、これと同様の事案を受任した場合、確定判決として国側から主張や証拠として提出されてします。

というわけで、法律事務所の選択も慎重にお願いします。

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