裁判長の釈明権と閲覧

S:「今日の期日報告書ですが、裁判長は
所得区分についての争点の確認をされただけでしょうか?
該当条文を問題にしていたように聞こえましたが・・・」

K:「ん? オレは期日報告書に書いたとおり
所得区分の争点について、確認したのだと
思ったけど・・・今日はサンタ所長も出頭していたから
念のため、確認しよう」

S:「サンタ所長、木下先生の本日の期日報告書
ご覧になりましたか?」

B:「いや、まだですが、何か問題ですか?」

K:「本日の裁判長の釈明が、小百合さんの聞いた内容と
私が聞いた内容が微妙に食い違ってしまったので
ここは、サンタ所長にうかがってみようと思いまして」

B:「裁判長の釈明ですか。確か、条文の確認をされましたが
結局は、通達との関係を聞いていたのだと思いますよ」

S:「困りましたねー
3
人とも微妙にニュアンスが違いますね」

K:「次回期日までに、回答しないといけないから
念のため、裁判所に記録閲覧に行ってきてくれ」

S:「閲覧?ですか」

K:「記録の閲覧に行ったことないか?」

S:「ないです」

K:「期日や弁論準備手続で行われた内容は
書記官さんが『第○回 口頭弁論調書』とか
『第○回 弁論準備手続調書』に記載して
記録が残されるんだ」

S:「ふーん。その調書には何が書かれてるの?」

K:「まずは事件名、調書名、弁論の場所、期日
裁判官名、書記官名、出頭した原告と被告だ」

S:「あー、会議録みたいな感じね」

K:「ま、そんなとこだ
それから、各当事者が法廷で陳述した準備書面や
次回予定も記載される」

S:「だから、調書を見れば、原告が次回期日で
何を主張することになっているかわかるのね」

K:「そういうこと。それに、期日で口頭で陳述したことも
必要に応じて調書に取られている」

S:「なるほど。あれ?証拠についても?」

K:「証拠も含まれるけど、『証拠関係別紙のとおり』と
されて、証拠群は別冊に綴られているな」

S:「書面は同じ綴りなの?」

K:「一緒だけど、調書が先にあるから、わかりやすいよ
調書は一定の形式で、作成した書記官が押印したものを
裁判官が確認して押印して、記録に綴じられるのさ」

S:「ところで、被告は、裁判長から釈明されたら
回答するけど、原告側が書面で釈明しても
無視したりするでしょ? どうして?」

K:「釈明権は裁判長だからな
裁判長の釈明には、その釈明に答える必要性も含め
何らかの回答をしないといけない」

S:「それで、原告が書面で釈明してるときは
木下先生は、期日で『この点について回答して
いただきたい』っていうのね」

K:「まぁ、どちらかというと裁判長の反応を見るのが
目的だけどな」

S:「つまり、裁判長も答えてもらいたいと思ってたら
原告の釈明を取り上げてくれるし、
どうでもいいと思ってたら、その点について
裁判所は重要と考えていないってことになるわけね」

K:「そうだな、でも、どちらかというとこちらに
釈明してくれるほうがありがたいけどな」

S:「なぜ?」

K:「それは、こちらの主張の不足分を補えってことだろ
だから、補えば請求が認められる可能性は高くなると
はずさ。 期待はずれなときもあるけどな」

S:「要は、裁判長が争点のどの点に興味を持ってるか
わかる場合があるってことね
そうすると、裁判長の発言は一言も聞き
漏らさないようにしないとですね」

◎        ◎        ◎

本日の関連条文など

民事訴訟法149
裁判長は、口頭弁論期日等において、
当事者に対して釈明できます(1項)

 当事者は、裁判長に対して釈明を求めることは
できますが(3)、相手方にはできませんから
裁判長経由で釈明を求めるのです

民事訴訟法91
訴訟記録の閲覧は誰でもできます
でも、謄写できるのは当事者と利害関係を疎明した
第三者だけです

裁判所法602
書記官が事件記録の作成及び保管をします

|

事実の探求(顧問税理士と弁護士の通訳)

K:「P先生、この処理はどういう理由でされたのですか」

P税理士:「木下先生、それはですね
こちらを立てれば、あちらが立たず
あちらを立てれば、こちらが立たず
だから、間をとって、えいっ!というわけでも
ないですが、まぁ、そんなとこですよ

小百合先生、先生は税理士だから
私の言ってること、わかりますよねぇ」

S:「えっ?あーそうですね。確かに実務上はそういうこと
あるかもしれませんね・・・(沈黙)」

◎        ◎        ◎

S:「木下先生、何を笑ってらっしゃるのですか?」

K:「今日もまた、小百合さん、仲間にされてましたね(笑)」

S:「P先生のことですね

税務訴訟でも税賠でも、税理士の先生と打合せしてると
意外と多いんですよねーわからないでもないけど
簡単に『Yes』とはいえませんね
私も税賠になっちゃうわ(笑)

税理士は申告書の提出期限もあるから
ちょっとかわいそうですけどね」

K:「解決しきれない問題も、期限までにクロかシロか
何らかの判断をしなければならないってことだな」

S:「でも、いくら実務でそうなってるとか
いままでの調査でも問題にされなかったとか
いってもね」

K:「裁判所で争うとなると、事実認定して、
法律を解釈して、適用することになるからな」

S:「そう、P先生のご主張は、法的には難しいって
結論になっちゃうのよねー」

K:「課税実務では、法律を拡大解釈したり
縮小解釈して、納税者有利に行われてたりするしな」

S:「でも、常に、そのまま裁判所に通じるとは限らない」

K:「そう。通達はそれに合理性がある限り、
尊重されるとは思うが、法律解釈となると、
裁判所はそれほど参考にしていないようだな」

S:「そうですね。ただし、評価通達を除いて、ですが
これは、解釈じゃないからでしょうか」

K:「そうだな。評価通達については、なぜか裁判所は
『特段の事情がない限り』、そのまま適用するって
ケースが多いよな

  そのおかげで、勝たせてもらえることもあるけど」

S:「今回は、残念ながら評価通達の問題ではないし・・・」

K:「『わかりますよねぇ』って言われてたじゃないか(笑)」

S:「だから、簡単に『わかります』なんて言えませんって
でも、できるかぎり、税理士の言葉を
法律上、有効となる言葉に翻訳してあげて
主張しようって、思ってるんですよ」

K:「ま、おかげで、助かっているよ
税務実務のこと言われても、わからないしな」

S:「そういう意味では、クライアント税理士と
担当弁護士の通訳って感じですね」

|

尋問

S:「今日は、尋問ですね。N社長、練習では
勘どころを捉えて、上手にできてましたが
うまくいくといいですね」

K:「そうだな。誰でも宣誓して、証人席に座ると
緊張するものだし

  以前、席に着いて、宣誓したとたん
頭が真っ白になってしまったっていう方もいたよ

  ところで、オレは尋問しないといけないから、
小百合さんは、あとで調書と確認できるように
尋問のメモをよろしく!」

S:「調書? あー尋問の内容は調書に取られるのですね」

K:「そう、書記官さんも記録してるけど
テープにも録ってるし、調書ができるまでに
数週間かかるけどな

  もし、調書に尋問の内容と異なることがあったら
特に不利なことは修正を申し立てないといけないから」

S:「了解!」

◎        ◎        ◎

裁判長(J):「証人のN法人 代表取締役 Nさんですね」

N社長(N):「はい」

J:「それでは、まず、宣誓をしていただきますが、
宣誓をした上で、虚偽の供述をしますと
過料の制裁を受けることになりますので注意してください

  では、そこの宣誓書を読んでください」

N:「わかりました
良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず
偽りを述べないことを誓います」

J:「それでは、原告代理人、始めてください」

K:「では、原告代理人木下からうかがいます

 まず、甲第15号証を示します
これは、Nさんの陳述書ですが
これはあなたが書かれたものですか」

N:「はい。そうです」

K:「ここに書かれていることは、間違いありませんか」

N:「はい。間違いありません」

K:「この3頁に・・・」

◎        ◎        ◎

K:「今日は尋問、お疲れさま!
よい機会だから、尋問のおさらいをしておこう
裁判長は、どんな進行をしたかな」

S:「えーと、まず、宣誓してくださいって」

K:「いや、その前に、『N法人の社長のNさんですね』

  って、確認していただろ?」

S:「そんなこと、仰ってましたか?」

K:「これは、『人定尋問』といって、まず、証人が
間違いなく、その人かどうか、裁判長が確認するんだ」

S:「それから、宣誓ね」

K:「まだだよ。宣誓の前に、虚偽の供述をした場合の
制裁について告知
しなくちゃいけない」

S:「なるほど、それでようやく宣誓
そして、尋問を申し出た側からの『主尋問』ですね」

K:「そう」

S:「次が、相手方当事者からの『反対尋問』ね」

K:「そして、『再主尋問』と続く
今回はなかったけど、相手方も『再反対尋問』できる」

S:「じゃあ、『再々主尋問』は?」

K:「再反対尋問からは、あんまりやらないけど、規定上は
裁判長の許可があればできる
こうやって、両当事者が順番に尋問していくことを
交互尋問』というんだ」

S:「それで、最後に裁判長が尋問して、終わりね
裁判長は当事者尋問の途中では、質問できないの?」

K:「できるよ。最後にする尋問は『補充尋問
途中で行う尋問は『介入尋問』ということになる」

S:「それから、陪席の裁判官は、聞いてるだけ?」

K:「いや。今日はなかったが、
これも裁判長が許可すればできる」

S:「今日、N社長はうまくかわしてたけど
相手方も同じことをネチネチと聞いてきましたね」

K:「そうだな。ただ、すでにした質問と重複する質問を
することはできないから、うまく、工夫してたな」

S:「ほかにも、してはいけない質問ってあるのね」

K:「あるよ。たとえば、個別的・具体的でない抽象的な
質問では、答えられないだろ?」

S:「そうね。それに、テレビでは『誘導尋問!』って
いうのみたけとあるけど、民事でも同じ?」

K:「同じだ。他には、争点と関係のない質問とか
当然だけど、証人を侮辱したり、困惑させたりする質問
それから、事実について尋ねるものだから
証人に意見を求めるような質問もだめだ」

S:「ところで、相手方から一番イヤな質問されたとき
N
社長、うまく切り抜けたじゃないですか
先生とちょっとニヤついてたら、裁判長に見られてたわ」

K:「そうだったな。裁判長も、そこが重要だと考えてたかもな
証人だけでなく、代理人のようすも窺って
心象を形成してくんだろうな」

◎        ◎        ◎

本日の関連条文

民事訴訟法201条,202条,206条,207条,209条,210
民事訴訟規則112条,113条,114条,115条,116条,127

|

明神ヶ岳

土曜日、日帰りで 明神ケ岳へ行ってきました!

Rimg1436

え?どこにあるかって? 箱根です
最寄り駅は、伊豆箱根鉄道の大雄山駅か
小田急線の新松田からバスで大雄山方面に向かいます
山歩きをされる方ならご存知なのかもしれませんが・・・

Rimg1424

天狗の下駄で有名な最乗寺から急な山道を登っていきます
急なところは、★必死★なので、カメラのことを考える余裕は
ありません

Rimg1433

なので、いきなり、「明神ケ岳山頂から、富士山を望む」 です
手前に、見えるのが 金太郎で有名な 金時山

そして、今回は、トレイルランニングイベントだったので
ここから、めざせ金時山! なのです

Rimg1446

そして、明神ではあんなに遠くに見えた金時山が
だんだん大きくなってきて、富士山が後ろに隠れるくらいに
(もちろん、望遠レンズで、近づけたわけではありません)

でも、走りの遅い私は、この辺で引き返さないと
夜になってしまいます

Rimg1458

そうして、こういう木のトンネルをいくつも抜けて

Rimg1454

トリカブト草やら、松虫草やら、平地では見れないお花たちを
横目に見ながら、一気に駆け下りてきました!

いつもはマイペースで登り降りしていたのですが
今回の降りは、他の参加者やスタッフを追いかけて
一気に降りたので違いました☆ 

おかげで、足の指にマメはできるし、爪は剥がれるし
大変なことになってます

B:「それで今日、小百合さん、変な歩き方してるんですね」
S:「そうなんです。お客さんじゃなくてよかったです~」

K:「でもサンタ所長、金時山往復できるスピードにするには
 もっと、ダイエットしないと登れないって言われたらしいスよ」
S:「まぁ、そうだけど・・・」

|

尋問の準備

K:「今日の期日で、N法人の社長の尋問の申出は
認めてもらえたけど、これからが大変だ

  オレが主尋問のQ&Aをつくるから
小百合さんは反対尋問のQ&Aを作成してくれ」

S:「主尋問に、反対尋問???
あのー、尋問って、証人を期日に出頭させて
そこで、こちらの質問に対して
1つ1つ答えていただくんじゃないの?」

K:「そうだよ。だけど、こちら側の証人だからって
相手方が尋問できないのでは、意味がないんだ

 それに、裁判官も尋問できる」

S:「あちこちから質問が飛んでくるってこと?」

K:「いや、順番は決まってるし、時間も申請したとおりだ
だから、効率よく行わないといけない

最初に尋問を申し立てた当事者側が行う主尋問
次に、相手方当事者が行う反対尋問
そして、もう一度こちらから必要があれば補充尋問
最後に裁判官からも尋問されることがある

こうして相手方や裁判官からの尋問も受けないと
証拠力は高くない」

S:「証拠力ですか?」

K:「そう。つまり、N法人については
もう既に社長の陳述書は書証として提出してあるけど

その内容が本当にそのとおりかどうかは
他の物証にもよるけど、尋問を経た上でないと
証拠力が低いと考えられるんだ」

S:「確かに、陳述書はウソではないけど
都合のよいところを強調して書かれてますものね」

K:「それで、尋問では、事実はこうなんですということを
直接本人の記憶に基づいて、答えてもらうのと

それはそれで事実としても、こういう事実も
あったんじゃないかとか、そういう反対の質問を
相手方や裁判所から受けて

それでも整合的な説明ができれば
陳述書の内容が正しかったと認められやすい」

S:「じゃあ、反対尋問が重要ってことね

だけど、反対尋問って相手が質問するから
  どんなこと聞かれるかわからないじゃないですか」

K:「でも、準備しておかないと、そんなつもりないのに
 誘導尋問にひっかかって、真実とは異なる回答を
 回答をしてしまうこともあるだろ

 そもそも、法廷で陳述したこともないんだから
 1人で証人席で、四方八方から注目されて
 回答するのは、意外と緊張するものさ」

S:「N法人の社長なら、喋るのなれてるし
 大丈夫な感じだけど・・・」

K:「まあな。だからこそ、尋問を申し出たんだ
でも、少なくとも、こちら側の立証の趣旨に沿う
回答はしてもらわんと困るし、

反対尋問もある程度は想定できるから
都合の悪いことについても、裁判官を説得できる
ような理由を説明できると、強いな」

S:「なるほど、では、できるだけイジワルな
 質問を考えてみるわ」

|

人証の証拠申出

S:「木下先生、N法人の社長は毎回期日に出頭して
原告の席にも座られてますよね」

K:「そうだけど?」

S:「わざわざ、尋問の申立てをしなくても
当事者席で陳述してもらえばいいんじゃないですか?」

K:「当事者席で弁論(陳述)するのと、
証人として尋問で供述するのでは、性格が違うんだ

  たとえば、弁論で緊張して、うっかり相手の主張を
認める発言をしてしまったら、それは『自白』したことに
なってしまうけど、当事者本人尋問の場合は
そういうことはない。裁判所の証拠調べの1つだからな」

S:「証拠調べですか?」

K:「尋問は、人を証拠方法として、その供述の意味内容を
証拠にするってこと、つまり『人証』だ

  だから、その供述した内容を事実として認定してもらうには
口頭弁論でも主張しなくてはいけないし、
裁判所もそれを判決の基礎とすることはできないんだ」

S:「尋問は、こちらが主張している事実を
立証するための手段の1つっていうことね

  今回のN法人の社長だけど、実際に取引した従業員さんに
供述してもらうほうがよい場合はどうするの?」

K:「本人の場合は当事者本人尋問。証人の場合は証人尋問だ
N
法人の場合もN法人=社長じゃないから
証人尋問だぞ。まっ手続的にはだいだい同じだけどな」

S:「1回で何人まで尋問できるの?」

K:「それは、事件や裁判所次第で、1期日1人のときもあれば
1
期日で数人を一気に尋問するときもある
そういうときは、準備も大変だし、とても疲れるよ」

S:「とりあえず、尋問のための証拠申出書を作成しましたが
提出すれば必ず認められるの?」

K:「いや。これも裁判所が不要と思えば、採用されないし
相手方も意見を述べることができる

  また、一度に数人の申出書を提出しても
全部が認められるとは限らないんだ」

S:「そうなの。N法人の社長の尋問も認められるといいわね
でも、もし認められても、社長忙しいから
日程が合わないと困るわ」

K:「それは、尋問される人の都合も聞いてくれるから大丈夫だ」

S:「ところで、この『同行』と『呼出』はどちらにしたら
いいですか?」

K:「あー、社長だから『同行』だ
『呼出』ていうのは、裁判所が呼出状を送達して
出頭させる場合だ。官職を呼び出す場合なんかに使うけど
そういうときは、そもそも申出が採用されることがないな」

S:「なるほど。じゃあ、ここに『同行』って記載して
提出しておきますね」

|

鑑定

S:「サンタ所長、先日、租税法のQ教授に
お会いしたそうですね」

B:「おっ、早耳ですねー
ちょうどよかった。N法人の事件でも参考になる意見を
うかがったから、意見書を提出していただこうと
お願いしようと思ってたところですよ」

S:「そうだったんですか。提出していただけるといいですね
ところで、裁判所がそういった専門家に意見を求めることは
ないのですか」

B「うーん、難しいですね
条文上は、『鑑定に必要な学識経験を有する者』が
鑑定を行うことになっていますが、
法律の解釈の場合は、裁判所の仕事でもありますからね

まぁそういう場合には、今回、Q教授にお願いしたように
『私鑑定』といって、当事者が直接、
第三者の専門家に依頼して、専門的知識や判断を
記載した書面を提出してもらい、
書証として提出すればいいんです」

S:「なるほど。それでは、裁判所を通して行う『鑑定』は
どういう場合に行われるのかしら?」

B:「今いったとおり、裁判所はそもそも解釈をする機関なので
法令に関する解釈について、わざわざ裁判所から
学者の意見書を求めることはないと考えるでしょうね

ですから、よくあるのは、建築物の瑕疵の損害額とか、
医療過誤の場合など、特殊な分野で、専門家の判断を
仰ぎたい場合が多いと聞いています」

K:「小百合さん、『鑑定』はどういう手続で行われるか
知ってるかい?」

S:「また、急にそんな・・・あ、でも先日お借りした資料に
『鑑定申出書』があったような気がするわ」

K:「おっ、一応資料を読んだみたいだな
そのとおり。鑑定は、当事者の鑑定の申出に基づいて
行うかどうかを裁判所が決定する

もちろん、誰を鑑定人にするかは、裁判官が指定するから
当事者が勝手に選べるわけではない」

S:「そうしたら、鑑定を申し出てもこちらに不利な意見が
提出される可能性があるってことね」

K:「当然、そういうこともあり得るだろうな
それに、相手方も鑑定するかどうかについては
意見を述べることもできるし、
裁判所が申出を採用するかもわからない

  だから、法律の解釈の場面でなくても、専門家に
鑑定意見を直接依頼して提出してもらうことが多いな
中立性という点では若干証拠力が落ちるかもしれないけど」

S:「もし、裁判所を通して、鑑定依頼する場合は
さきほどの鑑定申出書を提出するのね?」

K:「そうだ。申出が採用されると、裁判所が、
鑑定事項を定めて、鑑定人に送付する
通常は、文書で、鑑定書を提出してもらい
必要に応じて、鑑定意見について、裁判所や当事者から
証人尋問と同様の形式で、質問をすることもできる」

S:「あのー税務訴訟では証人尋問も珍しいですよね?」

K:「確かに、その訴訟が法律の解釈を争っている場合は
証人尋問が行われることはないだろうけど
事実関係を争っている場合には、あり得るだろう

  N法人の件も、実態を理解されていないようだから
証人の申出をしようと思っているよ」

S:「人証の場合は、申立が必要なんですね」

K:「そうだ。 じゃあ、せっかくだから
N
法人の件、社長の尋問の申立書を起案しておいてくれ」

◎        ◎        ◎

【本日の参照条文】
民事訴訟法213条~218
民事訴訟法規則129条~
136

|

専門委員と裁判所調査官

S:「木下先生、先日、サンタ所長とお話していたとき
裁判所が専門家を呼ぶことがあるって仰いましたよね?」

K:「ああ、覚えてるよ」

S:「どんな方が呼ばれるのですか?
税務訴訟でも呼ばれることありますか?」

K:「おやおや、今日は質問攻めかい?」

S:「いえ、そんなつもりはないんですが
たとえば、裁判所に株式や時価評価の鑑定書を
提出した場合に、裁判官がその評価結果ではなく
そもそもの評価手法がどういうものか
よく理解できないこともあるのではないかと
思ったものですから」

K:「評価の問題か。確かにあるかもな。だけど、
残念ながら、不動産や株式については
多くの裁判所は『通達に合理性がある限り』って
いう決まり文句で、評価通達どおりの判断を
することが多いな」

S:「そうすると、専門委員は不要ってことね」

K:「実は、専門委員は平成15年に創設された
比較的新しい制度なんだ」

S:「ふうん」

K:「だけど、租税関係の場合は、裁判所調査官って
いう別の制度があるんだ」

S:「それは、聞いたことがあります
国税から出向しているのですよね
なんか、不公平な感じがします」

K:「そうだな。調査官の場合は、裁判官の補助者として
位置づけられているから、当事者は
裁判官と調査官がどんなやりとりをしたとか
調査官の意見も直接聞くことができないからな

そんな反省もあって、専門委員の場合は
『当事者の意見を聴いて』から決定し、裁判官との
やり取りも、書面か弁論準備期日に口頭でするから
透明性は一応あるようだ」

S:「でも、税務訴訟の場合は、調査官がいるから
わざわざ、専門委員にお願いする必要はないってことね」

K:「多くの場合そういうことになるだろうな
でも、たしかU先生が担当した税務訴訟では
不動産の鑑定合戦になって、裁判所が
不動産鑑定士を専門委員として呼んだらしいよ」

S:「そういうこともあるんですね」

K:「実際に専門委員制度がよく利用されるのは
医療過誤とかだな

それに、専門委員は鑑定とちがって無料ってのが好都合だ」

S:「まずは、専門委員を呼ばないといけないくらいの
主張を相手からも引き出すってことですね!」

◎        ◎        ◎

【本日の参照条文】
民事訴訟法92条の2
裁判所法57

|

インカメラ

B:「小百合くん、P先生の件、相手方から
文書提出命令(文提)の申立てが提出されたらしいですね」

S:「そうなんです。でも、木下先生は、
申立てが認められても、申告書が
『公務員の
職務上の秘密に関する文書』に該当して
提出されないんじゃないかって仰っていました」

B:「なるほど。ところで、文提が申し立てられたときに
裁判所が、文提の対象となる文書かどうか
判断できない場合はどうするか、知ってますか」

S:「はぁ? とりあえず、申立てを採用して
提出命令を出してみるんじゃないですか?」

K:「ハハハ、困るなぁ。それじゃ裁判所の信用が
丸潰れじゃなか!」

B:「それもあるかもしれませんが、文書を持ってる人が
除外事由ありといっても、本当にあるかどうかは
その文書を見ないとわからないこともありますよね

 他方で、企業秘密などで、一旦外部に知られたら
回復できない損害をもたらすこともあるわけです

 申立人が競合相手だったりしたら、困るわけです」

S:「では、どうするのですか」

B:「そういう場合には、インカメラ手続といって
裁判所にだけ文書を開示させる方法があるんですよ」

S:「裁判所だけに?」

B:「そうです。裁判所は、その文書を見て
提出義務のある文書かどうか判断すればいいわけです」

S:「なるほど」

B:「実は、以前、証拠として提出した鑑定意見書について
その基礎としたデータの信用性を確認してもらうのに
この手続を準用してもらえないか、裁判所に
お願いしてみたことがあるんですよ」

S:「また、それも証拠で提出すればいいのに
どうしてそんな面倒な手続をされたのですか」

B:「それは、その鑑定意見書のデータが納税者の
過去10年以上のデータで、その契約書から、見積書から
全部証拠で提出するのは、膨大な量になるというのが
主な理由だったのですが、

それだけでなく、納税者の顧客情報や原価情報を証拠とすると
裁判資料も、公にされてしまうので、納税者の事業戦略上、
大変な障害になると考えたからなんですよ」

S:「でも、そもそも、準用って、そんなことできるんですか?」

B:「確かに正式な手続とは違いますが
裁判官には、訴訟指揮の権限がありますからね」

S:「それで、認められたのですか?」

B:「いや、残念ながら、認められませんでした
まあ、裁判官がその鑑定書を信頼してなかったのかも
しれないですがね・・・」

S:「でも、事案によっては、裁判官も専門外で
鑑定書の手法や用いられている用語がわからない
ケースもあるでしょうね」

K:「そういうときはだなー裁判所が当事者の意見を聞いて
専門家を呼ぶこともできるんだ」

◎        ◎        ◎

【本日の参照条文】
民事訴訟法2236

|

文書送付嘱託と調査嘱託

S:「文書提出命令って、罰則もついているから
なかなか厳しい規定ですよね
特に、訴訟の当事者でない第三者には迷惑じゃないかしら」

K:「それじゃ、同じような効果があって
罰則がない『文書送付嘱託』っていうのはどうだろう」

S:「はぁ、『文書送付嘱託』ですか?」

K:「そう。これは、裁判所が職権でもできるし
弁護士が裁判所に申し立てて行われるんだ

弁護士は、別途、裁判所を介さなくても
弁護士法の規定に基づいて、照会することもできるよ
『弁護士照会』っていうんだ」

S:「それは便利ね。ところで、送付嘱託や
弁護士照会は、誰に対しても、でもできるの?」

K:「通常は、相手方当事者が多いんだが
相手方でなくてもその文書をもってる者に対してならできるよ

ちょっと、似ているけど、調査嘱託だと、
対象は、官公庁や団体で、自然人にはできないんだ」

S:「うーん、混乱してきたわ
いろんな制度があるのはわかったけれど、
どうやって
使い分ければいいの?」

K:「まず、文書提出命令と送付嘱託の大きな違いは
裁判所からの提出命令に従わないと罰則があるし
その命令を受けた者が当事者なら、自白と同じ効果もある

これに対して、送付嘱託なら、そういう制裁はない
第三者に文書の提出を求めるなら、こっちのほうがいいかもな


それから、文提や送付嘱託では、文書があることがわかっていて
提出や送付を求めるものだけど
調査嘱託では、期待するとおりの回答が返ってくるとは限らない
というリスクがあるな

調査嘱託といっても、こっちの嘱託の場合は、
官公庁やその他の団体は公法上、裁判所の嘱託に

応ずる義務を負うから強制力はある」

S:「調査嘱託は、どんなときに利用するの?」

K:「謄本や抄本など、手数料を支払えば
簡単に入手できるものは対象外だけど
それ以外に官公署が保管している書類などについて
利用されているようだよ

それに、そもそも理由もわからないのに
県が、むやみに文書を出したり、回答することに
問題があるかもしれないし、拒むこともできる

その点、調査嘱託や弁護士照会なら罰則はないけど
拒むことはできないから便利なんだ
民間の団体の場合は、あくまで任意になるけどな


ちょうど、P先生の事件で、県に照会しようと

思っていたものがある。起案みるかい?」

S:「そうですね。では、とりあえず起案してみます

ところで、税務署にはこの方法で嘱託しても
この前の文書提出命令と同じで、国家公務員法に
ひっかかって、提出してくれないのね」

K:「残念ながら、そういうことだ
今回の県もわからないけど、ダメ元でやってみよう」

◎        ◎        ◎

【本日の参照条文】
民事訴訟法186条、226
弁護士法23条の2

|

«♪♪♪ 最近あった実話 ♪♪♪